top of page

食べる時間は、食べるものと同じくらい大切 高齢者の三大栄養素を考える「時間栄養学」

執筆者の写真: IKIGAI NOW
IKIGAI NOW
2023年6月16日
読了時間: 5分

更新日:9月7日


日付:2023年6月16日



「食べる量は多くないのに、なぜか体重が増えていく」「タンパク質を意識して摂っているのに、筋肉が減っていく」「食事は薄味にしているのに、血糖値がなかなか安定しない」――そんな経験はありませんか?


その原因は、「何を食べたか」ではなく、「いつ食べたか」にあるのかもしれません。

近年、「時間栄養学(Chrono-Nutrition)」は、世界の栄養科学において注目を集めている研究分野の一つです。


考え方はシンプルです。私たちの身体には生体リズムがあり、同じ食品を食べても、食べる時間によって身体の反応が異なる可能性があります。


特に高齢者では、加齢に伴って筋肉の合成効率が低下したり、インスリン感受性が変化したりするため、「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」を考えることが重要になります。


今回は、タンパク質、糖質(炭水化物)、食物繊維という三大栄養素のうち、まずはタンパク質を「何時に、どのように摂るか」という視点から、健康的に体重を管理し、筋肉を維持するための食べ方を考えていきます。



一、タンパク質――筋肉をつくる材料だからこそ、摂る時間が重要


タンパク質は、筋肉量を維持するために欠かせない栄養素です。

加齢とともに筋肉量は徐々に減少し、特に高齢期では筋力の低下が、転倒リスクや身体機能の低下などにつながる可能性があります。


タンパク質が身体にもたらす主な役割

  • 筋肉や身体組織の修復・維持

  • 免疫機能の維持

  • 満腹感を高め、体重管理をサポート

  • 傷の修復に必要な材料を供給

では、タンパク質はいつ摂るのがよいのでしょうか。


ポイントは、「1日の総量」だけでなく、1日の中でどのように配分するかです。



🔹 朝食はタンパク質の「重要なタイミング」


日本の長崎大学や早稲田大学などの研究チームによる研究では、タンパク質による筋肉への作用は、摂取量だけでなく、摂取する時間帯によっても異なる可能性が示されています。


特に、朝食時に十分なタンパク質を摂取することが、筋肉量や身体機能の維持に重要である可能性が研究されています。


高齢者を対象とした研究では、朝と夜に乳タンパク質を摂取するグループを比較したところ、朝食時にタンパク質を多く摂取することと、筋肉量や筋力との関連が報告されています。

また、別の横断研究でも、朝食時のタンパク質摂取量が多い高齢者ほど、握力が高い傾向が示されています。


なぜ朝食が重要なのでしょうか。

私たちは睡眠中に長時間食事を摂らないため、朝食は一日の最初の重要な栄養補給の機会となります。また、骨格筋にも体内時計が存在し、筋肉の代謝や機能に関わっていることが分かってきています。



 具体的な摂り方


朝食では、20~30g程度のタンパク質を一つの目安として、卵、乳製品、魚、大豆製品などを組み合わせるとよいでしょう。


例えば、

ゆで卵2個+牛乳200mL+チーズ1枚

または、

鮭約100g+豆腐

などの組み合わせが考えられます。


ただし、必要なタンパク質量は年齢、体格、活動量、腎機能などによって異なります。特に腎疾患のある方は、自己判断でタンパク質を増やさず、医師や管理栄養士に相談しましょう。



就寝前のタンパク質――睡眠中の筋肉づくりをサポート


ご存じでしょうか。

睡眠中も、身体では筋肉の修復・再構築が行われています。

健康な高齢男性を対象とした研究では、就寝前に40gのタンパク質を摂取することで、夜間の筋タンパク質合成が促進されることが示されています。



さらに、夕方に軽い運動を行った後に就寝前のタンパク質を摂取すると、夜間の筋タンパク質合成がより高まる可能性も報告されています。


つまり、日中に適度に身体を動かし、夜に適切な量のタンパク質を摂ることが、筋肉の維持をサポートする可能性があるということです。



具体的な摂り方

就寝前にタンパク質を摂る場合は、就寝1~2時間前を目安に、牛乳や無糖の豆乳などを適量取り入れる方法があります。

ただし、就寝前に必ず大量のタンパク質を摂る必要があるわけではありません。

1日の総タンパク質摂取量と、朝・昼・夕食へのバランスのよい配分を基本に考えることが大切です。



運動後――タンパク質を摂る大切なタイミング

高齢男性を対象とした研究では、レジスタンス運動後にタンパク質と糖質を摂取した場合、運動後の筋タンパク質合成が促進されることが示されています。

かつては「運動終了後30分以内に必ずタンパク質を摂らなければならない」という、いわゆる「ゴールデンタイム」が強調されていました。


しかし現在では、30分という厳密な時間制限よりも、運動前後を含めた1日のタンパク質摂取量と、食事全体のバランスが重要と考えられています。



具体的な摂り方


運動後は、できるだけ早いタイミングで食事や軽い補食を摂り、15~20g程度のタンパク質を一つの目安として補給するとよいでしょう。

例えば、

  • 牛乳

  • 無糖豆乳

  • ヨーグルト

  • ゆで卵

  • 魚や大豆製品

などが選択肢になります。


「30分以内に何が何でも摂らなければいけない」のではなく、運動後の食事まで含めて、1日のタンパク質を上手に配分する。


これが、高齢期の筋肉を守るための、より現実的な「時間栄養学」の考え方です。



コメント


bottom of page